河井寛治郎記念館・霊山護国神社・八坂の塔




 好天に誘われて、祇園界隈の未踏の地をつぶさに歩く。この日はさながら“坂登り”の日だった……。
 まずは祇園から東大路を五条まで歩き、少し南西に入った辺りにある河井寛治郎記念館を訪ねる。ここは彼の作品や収集品から民芸運動の真髄を窺い知ることのできる好スポットだ。どの一角も大層居心地良く調えられ、館内を見て回るだけでなく、ゆっくり座って設えや調度を味わいたくなる。写真は自由に撮って良いが、受付のノートに届け出ることになっている。多くの陶芸作品を産み出した素焼窯や登り窯も見学することができ、思いの外満足度の高い資料館であった。一人900円の入館料はちょっと高いかな……。。



 東大路を少し南に下がり、渋谷坂を東へずっと上がってみる。結構な坂道で息が上がる。目当てのピッツァリアは日曜定休、京都女子学園の先まで歩き、三嶋神社の脇から国道一号線の下まで降りて東大路に戻り、イノダコーヒの清水支店で休憩を取るべく五条坂から産寧坂へと登る。この登りも意外に距離がある。


 イノダで少しお腹に入れ、一息ついてから八坂の塔へ。途中、いつも看板を眺めるだけだった霊山(りょうぜん)護国神社坂本龍馬中岡慎太郎の墓に行ってみよう、ということになり、一路東へ。この登りはキツかった。かなりの傾斜の坂道を登り切った後、墓所までは300円の料金を払って階段を登る。寒中にも関わらずたっぷり汗をかいて一番上の木戸孝允と幾松の墓まで上がった。
 この神社は明治初年に創立され、幕末から維新にかけての志士やその後の戦争での戦没者が祀られている。極東裁判で唯一人、戦犯全員の無罪を主張したというパール氏を顕彰する碑もあり、なかなか興味深く山内を巡った。
 この神社は、健脚向き。。


 足もガクガクになりながら山を下り、ようよう八坂の塔へ。
 いつも時間切れで中を観ることが叶わなかったが、この度初めて木戸を入る。第二層まで上がることができるが、非常に急な梯子状階段を上がり下りしなければならず、上層に上がってもさほど眺望が開けるわけでもないので、ご年配者や小さなお子さんは無理しない方が良さそう。
 たびたび焼失し、現在の塔は室町時代に再建されたもの。しかし歴史は古く、聖徳太子によって仏舎利三粒を納めた五重塔が建てられたと伝わる。塔内部から覗くことのできる礎石は、その飛鳥時代のもの。京都がまだ都ですらなかった遠い昔に思いを馳せる。 
 境内には木曽義仲首塚もあり、観光地の真っ只中にありながら入る人も少ないこの一角は、何やら独特の雰囲気。傾いた陽に追われるように坂を下り、笑う膝を労りつつ帰路に就いた。