七条界隈と渉成園



 キーンと冷えた空気の中、通り雪にも見舞われつつ、白梅町から205番のバスで七条御前へ。連れ合いが全国誌のコミック雑誌に紹介されていたのを発見した「ほへと」という蕎麦屋で昼食後、バスで烏丸七条まで移動し、東本願寺の別邸として国の名勝にも指定されている渉成園へ。
 園内はわりと広く、石川丈山作と伝わる名園だけあって、趣向を凝らした池泉回遊式庭園になっている。茶道との関わりも深かったとのことで、小ぢんまりした風情の良い茶室の他、煎茶三席の酒店・飯店・茶店として用いられた三席の茶室も完存し、往時の優雅なひと時を想起させる。大きな藤棚や枝垂桜もあり、その時節には大層美しい景色になることだろう。回棹廊と呼ばれる木橋の風情は、平安神宮神苑の泰平閣や修学院離宮の池畔の楼閣にも似て、大層優美だ。立ち止まる毎に変化して飽きさせない作庭の工夫や、配された一つ一つの建物の印象深い佇まいが、日本庭園の美を余すところなく伝えてくれる。そしてそんな雅趣溢れる空間をほとんど独り占めできるほど“空いている”のもここの良いところ。


 渉成園を後にして、全国の天神さんの発祥の地とされる文子(あやこ)天満宮を覗く。ここは菅原道真の乳母だった女性がかつて住まいしていた場所で、北野天満宮の前身だそうだ。蛇足ながら、ここで老松社の縁起を読み、北野天満宮に松の木が多いことや、老舗菓子店「老松」の名の由来を初めて知った。道真が配流の後、無実を神に訴えるために登山した際にその笏を持たされ、北野の地に松の種を播くよう託された道真の岳父とも家臣とも伝わる人を祀った社で、北野に道真が神霊として降臨した際、多数の松が一夜にして生じた、と伝わる。林業の神として崇められているようだ。


 さて、ぶらぶらと烏丸通り目指して西へ行き、東本願寺前の紅茶専門店、「Te Concepcion」(フランス語表記で、最初のeと最後のoにはアクサン・テギュ(アクサンターギュ)が付く)へ。お腹がさほど空いていなかったので、一人1,400円のアフタヌーンティーはパスして、900円のスコーンセットと単品400円のキャラメルチーズケーキを注文し、ロイヤルミルクティー(550円)を頼んだ連れ合いとシェア。スコーンにはブルーベリージャムとクロテッドクリームが添えられていて秀逸。紅茶はしっかり飲み頃に淹れたものを茶葉抜きでポットで供されるため、湯で薄める必要が無い。ティーコージーで保温しつつ、しっかり3杯いただける。ここはランチも良いようだが、何せロケーションが普段の活動範囲から離れているため、試してみるのはちょっと先のことになりそう。



 一息ついて烏丸通りを五条辺りまで上がり、西へ少し入っておはぎで有名な今西軒に立ち寄るも売り切れ。また次の機会を楽しみに、四条まで上がってACTUSのセールでスリッパを見繕い、帰宅。
 さて明日はどちらの方面へ出掛けようかな……?