Rua(街路)はラビリンス



 サンパウロの道は曲者だ。“通常一方通行、ときどき双方向”を走りこなそうと思ったら、間違えながらでも経験しながら覚えていくしかない。ところがひとたび間違えると、単純に「四角く走って元に戻る」というわけにはいかない。次の道は反対方向の一通、その次の道を曲がれたとしても、一本下がった所でどっち向きの道になっているかは、行ってみなければ分からない。
 加えてバス専用路線や右・左折禁止路もあれば、碁盤の目とは程遠いぐにゃぐにゃ道ありといった具合で、終いにはどっち向いて走っているか皆目分からなくなっちゃう。プラッカ(標識)はわりとたくさん出ているけど、「自分が今どこにいて、どのバイホ(地区)が目的の方角に当たるか」見当が付かなければお手上げだ。そして物事万般の例に漏れず、得てして“あのエリアにだけは入り込みたくない”と思っている方向へ、何故か誘われて行っちゃうんだよね。
 それが分かっているから、出掛けるときには道路マップで事細かに予習していく。なるべく詳細にルート・イメージを造って出陣するんだけど、平面の地図で描いたイメージと現場の状況とはかけ離れていることが多い。距離感やアップダウン、思わぬ車線の増減など、勘の狂うことばかりだ。だけど、ホウホウの呈で帰宅した後どう考えるか、これがミソなんだ。


 やっぱり難しいし危ない、タクシーで行った方が賢明、と思ってしまうと、以降、もうそのエリアにマイカーで出掛けることはできなくなる。多少怖い目に会おうとも、はたまた疲弊しようとも、「大丈夫、次回はもうちょっとスムーズに行けるわ」と自分に言って聞かせることが肝要だ。とにかく、こと道に関する限り誰であれ(サンパウロ生まれの「パウリスタサンパウロっ子)」ですら例外なく)、トライ・アンド・エラーを重ねなければ克服できないのだし、逆にひとたびその目的地周辺の地理(とクセ。)を呑み込んでしまえば、それからはリスクもずっと軽減する。
 我が家は連れ合いが通勤に使う車1台だから、私は“普段から足代わりに乗って車両感覚や道に慣れる”というわけにはいかない。主人が出張で車が使えるとき、不定期に載るだけだから、サンデードライバーよりタチが悪い。それで間違えず、心労も無く出掛けてこよう、っていう方が「虫のいい話」だよね。


 というわけで、今日もまた冷や汗掻き掻き、危険運転満載で、それでも何とか目的を果たして帰宅しました。。正直ギブアップしちゃいたいときもあるけど、意地っ張りの私のこと、そんな悔しいことできないもの。せいぜい重大事故を起こさないよう、事件にだけは巻き込まれないよう、注意しながら運転します。。