アルパのホームコンサートへ



 Luna Isabelさんは、かつて8年間、駐在でサンパウロに暮らし、その際アルパ(パラグアイ・ハープ)に出会って研鑽を積み、今はプロの演奏家として活躍している方である。年に一度の来伯でサンパウロ入りされるのを受けて、個人のお宅でホーム・コンサートとして演奏会が催された。
 以前から一度はゆっくりアルパを聞いてみたいと念願しながらなかなか叶わなかったので、今回、生の音色を聴けたのは嬉しいことだった。


 アルパはパラグアイでは大層ポピュラーな楽器だそうで、至る所で主に男性が弾いている、と聞く。30数弦の多弦琴だ。バイオリンなどと同じく、糸の張り具合でそれぞれの弦が決まった音に調弦されるのだが、中央手前よりの1本をFまたはEに定めて、そこから上下に西洋音階に調弦される。
 クラッシックで使われるハープより小ぶりなこともあるのだろう、音はわりと高め、浅めに思われた。ゆったりボロロン、ボロロンと奏でるというよりは、シャララン、シャラランと技巧を尽くしてリズミカルに音楽を作っていく、という印象だ。 奏でる曲目はパラグアイの先住民、グヮラニー族に伝わる古楽からポピュラー、創作、クラッシックまで、多岐に亘るそうだ。こうなると民族楽器というよりは音楽表現の一つのツールとして汎用性がある、といった方が良さそうだ。
 曲毎に、簡単にご本人が解説を交えながら紹介してくれるので、どんな背景や曲想の音楽か、イメージしながら聴くことができる。時に軽妙に、時にドラマチックに、時に技巧的に、様々な曲が奏でられていく。メロディーや和音も自在だけれど、一番印象に残ったのは名曲と言われる古典的な曲だった。アルパ本来の持ち味を遺憾なく発揮して、自然の営みと呼応するように唄われていく……。


 1時間少しの演奏会は、あっという間に終わった。最後に少し、楽器を触らせてもらった。ピアノやギターと違って、弦を俯瞰するのではなく横から弾くというのは思いの他難しかった。開放された弦が、指の力具合ひとつで、時に力強く、時に優しく音を作る。
 新しい楽器との出会い、新しい音色との出会い。心に残る時間となった。