停電は困りもの


 なかなか気温が上がりきらない日が続いている。それでも昨今は、雨季特有の雷雨が度々やってくるようになった。
 冬場にはしとしと降る雨もないわけじゃないが、温かくなると“雨”といえばドカンと降るもの。大抵は夕刻、それまでのお天気がうそのように薄暗くなったかと思うと大粒の雨が落ちてきて、あっという間に道隔てて向こう側のプレジオ(建物)が見えないほどの驟雨となる。雷とあいまって、日本の真夏の夕立さながらにしばし降り込めたかと思うと、パタッと止む。
 その雨の激しさたるや台風も顔負けだ。風がひどいときには、さながら雨粒のカーテンが拭きなぶられるよう。サンパウロの空気は悪いことで知られているが、こういう雨の後だけはすっかり洗われて気持ちが良い。
 ただし、坂の多い街だけに、こういう大雨の時にはしばしば道路は冠水し、滝のように水が流れ、時には水が引くまで通行できなくなることもある。ひどい嵐の時には街路樹が倒れて通行不能になることもある。そして居住エリアによってはしばしば停電するようだ。こういった停電の場合、復旧するまでに半日で済めばよい方らしい。


 幸い私たちのアパルトメントでは、引っ越してきて以来の2年ちょっとの間で、停電したのは2〜3回ほどだった。それも落雷のせいで突如、というのではなく、大抵が工事のための予告つき停電だ。それでも停電時は不便この上ない。
 オーブントースターも電子レンジも、果てはガスコンロまで着火は電気式だ。シャワーのお湯も、マイコンは電気で動く。でもその程度は止むを得ない。もっと困るのは連絡手段だ。
 電話線は通じているものの、電話機は電気のパルス式だから電話ができない。何か異常があっても、1階のポルタリア(守衛詰め所)との連絡手段であるインターコムが使えない。そしてここは14階(1階はテヘオと呼ばれて2階が1階になるから実質15階)、エレベーターが使えなくなる停電時は、さながら陸の孤島になる。階段で上がり降りできるかというと、これが実際問題として不可能に近い。非常階段は建物内部にあるため窓がなく、停電時には非常灯も点かない。真っ暗な中、15階の高さを上がり降りするのはほとんど無理だ。一度だけ、連れ合いが小さな懐中電灯を持って降りたことがあったが、もうゴメンだ、と言っていた。


 11月2日はブラジルのお盆だそうだ。この時期、日本と同様、人々は先祖の墓に詣で、世を去った家族を悼む。この日が木曜のため、恒例により金曜も休みになり、今週末は4連休だ。その初日、電力会社のメンテナンスで1時間の停電。大方の予想通り、やっぱり1時間で終わるはずもなく、復旧までには2時間弱を要した。ファシネーラさんに、停電でエレベータが使えないから遅くていいよ、と電話したのだが、“いや! 早く来て早く帰る。”とのことで、早朝からご出勤。結局いつもとさほど変わりない、木曜の一日。。