“テアトロ・ムニシパル”デビュー


 


 クラッシック・コンサートといえばSala São Paulo、そしてオペラやバレエの上演といえばTheatro Municipalだ。市街中心部、セー広場にも程近く、優雅な佇まいが特徴的なこの劇場には、クラッセ・アルト(上流階級)とクラッセ・メジオ(中流)の文化人たちが着飾って訪れる。
 1903年竣工、1911年杮落とし公演。パリ・オペラ座を参考に建設されたというネオ・バロッコ建築で、“瀟洒な”という形容詞がピッタリくるような、小ぢんまりした劇場だ。日本や欧米の大劇場に慣れていると、どの席に座っても舞台上の出演者がごく近くに見える。


 


 上左はビレテリア(チケット売り場)。館内のあちこちに、美しいステンドグラスがあしらわれている。


 


 2階にはラウンジ(タイトル下、外観と共に掲載した写真)とテラス。ウィーンのオペラ座などではラウンジにブッフェ・コーナーが設えられているが、ここは収容人数が多くないためか、2階の一隅と1階のビレテリアの反対側に、小さな飲み物と軽食のコーナーがあるのみ。テラスに出ると、夜風が心地よく、恋人たちには格好のデートスポットだ。

 
 

 


 この日の出し物は、モスクワ・シティ・バレエのドン・キホーテ。イギリスを中心とした旅回りで生計を立てているバレエ団だそうで、大道具などは必要最小限だ。
 それでもサービス精神は満点。クライマックスのキトリとバジルのグラン・パ・ド・ドゥで、ソロに移行する合間に他の踊り手のレパートリーを織り込んでいたので、“長い旅回りを、身体に負担を掛けずに乗り切る知恵かしら?”と思っていたら――。カーテンコールの最中、出演者がサッと下がって中央を空けたと思いきや、グラン・パ・ド・ドゥの後半、二人がそれぞれにジャンプや回転で高度な技を披露する一番の見せ場を、もう一度、やってのけた! バレエ・コンサートでアンコールなんて初めて見た。これにはスタンディング・オベーションの観客こぞって大拍手。ロシアバレエの底力を垣間見せる「技あり」の演出だった。


 


◆この界隈は治安の良くないことで知られている。
 終演後、出口を出た人々はあたかも引き潮のごとく、
 どこへともなくいなくなってしまう。 
 近くにタクシー・ポントがあるとは聞いたが、並んでいる人皆無。
 存知よりのタクシーに迎えに来てもらうのがベターかも。
 因みに出入り口から建物正面を回り込み、裏手に面した道路を右折すると、
 道沿い左側にいくつも駐車場があり、ここを利用している人も多かった。
 でも、そこまで歩いていくのも、大人数じゃないとちょっと危険かも。