千本釈迦堂〜三上家路地へ


 昨夜降り続いた雪が薄っすらと積もり、午前中は粉雪が舞う寒の一日である。午後になって一転、きれいな晴天となったのを幸い、まだ未踏の北方面に足を向けることにした。


 七本松通を北へ突き抜けたところに千本釈迦堂がある。応仁の乱で焼け残ったという本堂(国宝)は、洛中最古の建造物だそうだ。「おかめ」さんは、さながらここの“マスコット”。お守りや土鈴など、いろいろな“ライセンス商品(?)”に姿を変えて並んでいる。ひょうきんで福々しい姿とは似つかず、夫のために自刃したという悲しい物語が伝わっている。境内の「阿亀(おかめ)桜」は見事な枝垂桜。満開のときに再訪することを誓って、寺を後にする。そうそう、12月の成道会の“だいこ炊き”にも来なくっちゃ。。


 門前の五辻通を東へ。千本通の角に五辻の昆布がある。どの味付昆布も美味しい! 松茸昆布ととろろ昆布、それに鰊の昆布巻を買い込んだ。昆布好きの向きには、型抜後の昆布シートがお得。350円の小袋を作るときもあるそうだが、案外1100円の大袋の方が人気があるとのこと。しっかりした昆布なので、1100円の袋だと相当食べ手がある。知り合いと分け合うのが良いかもしれない。
 昆布屋の斜向かい、道を渡った千本の西側にあるのが漬物の近為だ。ここの漬物も美味しい。。単品で自宅用使いも良いが、詰め合わせが贈答用に良さそうだった。


 そのまま千本を北へ上がると、千本ゑんま堂がある。この世とあの世を行き来したという小野篁ゆかりの寺だ。迫力ある閻魔様のお顔の一部が、正面に切ってある窓から垣間見える。
 ゑんま堂から蘆山寺通を東へ、大宮まで突き抜けたところにあるのが“たんきり飴本舗”。飴だけでなく羽二重餅やお饅頭もあって、つい手が出そうになるのをグッと堪える。
 寺之内通まで下ってちょっと西に入ると、西陣織工芸美術館『松翠閣』の錦の暖簾が目に入る。洋の東西を問わない様々な書画を織物に仕立てた展示品は見事だ。中でも、現在“好評に付き展示継続中”という蔵の内部に巡らせたモネの睡蓮――蛍光染料を使った糸を織り込んでブラックライトで浮かび上がらせるという趣向が秀逸。真っ暗な蔵の中、仄かに浮かび上がる睡蓮の花に囲まれる情景は、想像以上にドラマティックだ。この近くには織成館(おりなすかん)という、やはり西陣織にゆかりのスポットがある。織物体験などもできるというので、そのうち訪ねてみたい。


 智恵光院通を下ると、蕎麦屋の「にこら」がある。そこで遅めのお昼にありつくはずが、14:30までのためタイムアップ! 残念……。気を取り直して少し上がり、紋屋図子(ずし)を東へ。ちょっと入った北側にあるのが、かの有名な「三上家路地」である。確かに、これほど風情情緒たっぷりな路地は他に類を見ないかも。このときばかりはカメラを持参しなかったことをちょっと悔やんだ。
 路地の中程に蜂蜜専門店のドラートがある。様子を見るだけのつもりで暖簾を潜ったものの、あれこれ味見させていただくうちにあまりに豊富な味わいにすっかり気を奪われてしまった。これはわざわざでも(このロケーション、絶対『通りすがり』は有り得ない!)行く価値あり、だ。


 家を出てからほぼ2時間。智恵光院を今出川まで下り、東へちょっと、ル・プチメックのイートインで一息入れることにした。このパン屋さん、やっと訪ねることができた。種類豊富なタルトも良いが、一番美味しかったのはスライスしたバゲットで作ったクロック・ムッシュだったかも。熱々に温めてくれるパンを、エスプレッソに熱いミルクを添えて供されるカフェオレと一緒に頂く。至福。。400円台とちょっとお高めだが、ずっしり焼き上げたレーズンパンも美味だった。


 またまた長くなりました。ぶらり西陣歩き旅、本日のところはこの辺で……。