薬師寺・唐招提寺探訪




 朝こそ風が冷たかったものの、陽が高くなるにつれて気温も上がり、気持ちの良い散歩日和に。
 奈良は今年、平城遷都1300年祭文化財の特別開帳など気になるイベントが目白押しだが、大抵の寺社では春の特別公開は来週末から、というところが多い。そこで今日は、修学旅行で拝観した懐かしの薬師寺唐招提寺を抑えておくことにした。


 上の写真は薬師寺の伽藍の中で唯一、創建当時の息吹を今に伝える東塔とその水煙。フェノロサをして『凍れる音楽』と言わしめたという美しい塔である。各階に裳階(もこし)を従えるため6層に見えるが、3重の塔である。
 薬師寺は国宝の東塔以外は戦火で焼けている(金堂に安置されている白鳳時代を代表する薬師三尊像は、金銅製のため焼失を免れた)。それを復興したのが高田好胤師。全国を行脚し、写経勧進によって多くの伽藍が再建された。復興費用に相当する200万巻を集めるのは無理だろうと言われながら、現在までに750万巻が集まっているという。
 
 この寺は講話が面白い。今回はちょうど時間が合って、金堂で行われた講話と、引き続き西塔最下層開廟に合わせて行われた読経と講話に立ち会えたのだが、ユーモアを交えながら朗々と語られるお話に、和やかな中にも薬師寺という寺への理解を深めることができたように思われる。
 興味深かったのは、ここは鎮護国家を祈る寺であり、檀家がいない、つまり墓が無いという話。寺の僧侶が亡くなっても供養のための経をあげることは許されておらず、他から僧侶を連れてくると聞いた。
 下、境内に色を添えていた早咲きの桜と、唐招提寺方面から遠望する薬師寺伽藍。
 




 唐招提寺は圧倒的な存在感の金堂の記憶だけが鮮明に残っていたのだが、この度ゆっくり境内を歩いてみて、寺域内の静かな風情が印象深かった。戒壇や、和上の御廟の静寂が、ことのほか心に残った。
 金堂には天平の名仏が並び祀られている。廬舎那仏、薬師如来、千手観音などなど、迫力のある仏像の数々を拝観することができる。





 来週はいよいよ春の特別公開が始まる。またお天気に恵まれ、気持ちの良い奈良散歩に繰り出したいものである。