焼き芋の底力



 昨日、以前ご紹介した焼き芋の丸寿に立ち寄り、一本購入してきた。
 前回は客も引けた頃にぽっと買って帰っただけだったが、この度は焼き上がり10分前から列に並ぶ。


 待つ間に見回すと、いくつも札が掛けてあることに気付いた。
 『撮影お断り』『食べ歩き禁止』『この店の前であっても食べ歩きはご遠慮ください』――なるほど。このマナー徹底のために、1本買いの客には「どこで食べてくれはるン?」「持って帰って食べてくれるんやね」と確認しているわけだ。
 『次の焼き上がり時間』の札の横には『10分遅れ』の札。事実、3時半の予定が10分遅れで、ぴったり3時40分に焼き上がった。


 5分くらい前になると、おじさん、半眼を閉じてやにわに口上を始める。大声を張り上げるわけでもなく、誰に話し掛けるともなしに、軽く節を付けながら、淡々と、流れるように、語るのである。趣旨は概ね以下の如し。


  ・芋は持ち帰ったら常温でまず1週間は大丈夫です
  ・その後、冷蔵庫に保存し、
   10日から2週間くらいが寧ろ食べ頃になります
  ・その際、ラップやビニールを使わず、
   芋の呼吸を邪魔しないように紙に包んで保存してください
  ・食べ慣れたお客さんなら3週間くらいは、
   余裕で充分に楽しんでいただけます
  ・羊羹のように切って食べてください
   買ってすぐ食べるより、
   置いておいた方が味は馴染んで良くなります


 と、こんな感じである。いやはや驚きました……。芋は火を通してしまうと“足が速い(痛みやすい)”と思い込んでいたので、1週間も常温で大丈夫だとはツユ知らず。まして2週間も3週間も冷蔵庫保存が利くなんて、ビックリです。。


 そういう食べ方をするせいか、単にお土産として配るからかは分からないが、早くから並んでいたおばさんなどは5本、10本と、まとめて買って行く。10本て、あなた! 1本が径7センチ位、長さ20数センチもあるような巨大な芋なんですよ?! 店には5本が丁度入るプラスチックの籠が用意してあって、10本買ったおばさんはそれを2つ下げて行きました。すごい重量のはずです……。
 皆さん買い慣れている方たちばかりらしく、『中くらいの3本』とか言いながら次々と買って行く。私も見栄を張って、『……お、大きいの、1本!』と言ってみたものの、やっぱりまだ地の人には見えないのか、「家、持って帰って食べてくれはるン?」と訊かれてしまった。
 まだまだ修行が足りません。。