織成館訪問


 今日の散策は、今出川通から浄福寺通を上がって織成館に立ち寄り、寺之内通を経て大宮通ほんやら洞で遅めの昼食。上がって鞍馬口通に折れ、北大路に抜ける、というルートだ。


 織成館は、今を遡ること20年ほど前に、織元の「渡文」が店舗兼住宅(昭和11年築)を改築して整備したギャラリーだ。奥2階には現役の製織工場があり、伝統工芸士による手織り実演が見られる。予約すれば手織り体験もできるそうだが、今日は見学だけに。
 手の込んだ唐織の帯地は、復原能装束の柄行である。能装束を復原して寄贈する代わりに、同柄を意匠として使わせてもらうと聞いた。
 一両と数えるこの帯地、驚くほど軽い。だから“締める”んじゃなくて“結ぶ”のだそうだ。伝統工芸士の津田功氏曰く『重い帯はずり落ちるから締めんならん。軽い帯は結ぶだけで落ちません』のやて。
 この見事な手織り帯は唐織の中でも“本唐織”と区別して呼ばれ、デパートに並ぶと120万円を下らないのだそうだ。美しい色柄の織模様がふっくらと盛り上がり、機械織では出せない独特の味わいだ。以前、お茶の全国大会の折に福引で当った友湖の数奇屋袋の織地の風情と良く似ている。いつか本唐織の帯を締めて、もとい“結んで”みたいものである。


 織成館のある辺り、大黒町は町ぐるみで「石畳のこみち」を整備し、この一角は垢抜けた町並みが際立つ。楽しい店があと幾つかあれば、立派な観光スポットになりそうな風情だ。


 ほんやら洞は自家製パンがとても美味だった。お昼のサンドイッチセットはたっぷりのサラダとお茶が付いて780円。
 鞍馬口通を左に折れ、南側に見つけた「さらさ西陣」は、レトロな銭湯を改装したレストラン兼喫茶。色鮮やかなタイル模様も懐かしい、ちょっと洒落た店になっている。


 西に向かって正面方向が船岡山、右に折れて北大路に抜けたところが大徳寺である。大徳寺塔頭もゆっくり見て廻りたいところだけれど、夕刻から落ちてきた小雨に足止めされて帰路に着く。北大路通のその先は、また次の機会のお楽しみ。