天神さんの梅花祭で野点の雅趣




 カッターシャツに春コートを羽織っただけでも、歩いていると汗ばむほどに気温が上がった今日の午後。11時予約のヘアカットの後、一路北野天満宮へ向かう。
 新規オープンしたばかりのヘアサロンでは、シャンプー・カットのみで何と2時間半も掛かり、すっかり予定が狂ってしまって気が急くことこの上ない。四条烏丸から203系統に飛び乗ったら、天神さんへ出掛ける人で大混雑! これなら「まもなくきます」ボタンの点灯していた201か46で千本今出川から歩いたほうが早かったかも。


 ようやく北野天満宮に辿りついたのが2時ジャスト。まずは植木市の辺りに出店しているという「オオヤコーヒ」さんの出店を探す。一番奥まったところまで分け入って、ようやく見つけることができた。
 5人ほど座ればいっぱいの小さな屋台。客が来てから好みを聞き、豆を挽いてじっくり淹れてくれるため、ある程度の待ち時間は覚悟しなくてはならないが、それだけの価値はある一杯。湯の温度調整、注ぎ方、蒸らし、抽出……コーヒー好きなら学ぶこと盛り沢山のひとときだ。絶品のコーヒーはするすると喉を通り、あっという間に至福の時は過ぎていく。1杯350円。
 今日は残念ながら豆は売り切れだったが、弟子が焙煎しているという河原町今出川に程近い「カフェ工船」を紹介してもらう。まあ、来月までに立ち寄れなければ、次の天神市の際、早出しよう。。



 上七軒の芸舞妓・女将総出で営まれる野点は15時まで。宝物館の入場券と併せて1,500円は決して安くはないが、一度は体験してみようと決心して入場。因みに1月25日から社務所で頒布していた3,000枚限定の拝服券、当日券もふんだんにあり、売り切れる心配はなさそうだった。
 紅白の陣幕で囲われた敷地内では、幾本もの梅がまさに花盛り。折からの陽射しに照り映える梅の花を背景に、芸舞妓さんらがお茶を運ぶ様子は雅の極み。これは1,500円払っても一見の価値はある(一度は、ね)。
 行列は座礼席に座る人の列。座礼ではゆっくりお手前を拝見でき、前に人が立たない状態で撮影も狙えるため、人気が高いようだった。一方、立礼席ではお茶も随時運ばれてくる様子で、いただき終わった人から順次席を替わるため、回転が速い。何せ初めてのこと、そういう事情を呑み込んだのは立礼の席に座ってからのことである。でもまあ、欲しかった写真は幾枚か撮ることができたし、ここでそう長居をする気もなかったため、早々にお茶をいただいて席を譲った。





 注意点、その1。お菓子の鶴屋吉信謹製薯蕷饅頭は、入場した際神饌(干菓子)とともに渡される。着席後、頃合いを見計らっていただき、お茶が来るのを待つ。だから、お菓子の持ち出しはない。
 注意点、その2。立礼の長椅子には切れ目がない。中程の場合、洋装の人は跨げるが、和装の人は椅子の端に座らないと入ることも出ることもできない。



 帰路、顔見知りになった骨董屋さんを覗いてから上七軒を通り抜ける。野点を終えて歌舞練場方面に帰着する芸舞妓さんを写真に収めようと、ポイントで待っているカメラ愛好家も多い。
 それにしてもこの暑いほどの陽気、毎年のこととはいえ、朝から16時近くまでお手前やお運びをされた芸舞妓さんたちも相当疲れたことだろう。しかし、綺麗どころが華を添えたお蔭もあり、今日の天神さんはそれはもう大層な賑わいぶりであった。次にこれほど賑わうのは、6月の夏越天神かしら……。