東寺散策



 昨日に引き続きカラッとした晴天。5月も末だというのに気温は低めで、長袖のシャツ一枚では心許ない。
 連れ合いは今日が誕生日。前々から読みたがっていた本を取り寄せてリボンを掛け、昨夜のうちに枕元に置いておいた。実は前日のうちに見つかってしまったのだが、それでも“演出”込みで「プレゼント」ということで。。


 昨日は休養日ということにして、買い物他の用を済ませておいた。実は、クリーニングから持ち帰った白のカッターシャツに輪染みを見つけ、気に入っていただけにメゲそうになった、という一幕もあったのだが、幸い漂白液に浸けたら綺麗に消えてくれて胸を撫で下ろした。今朝、それやこれやを洗濯して干し上げると、お待ちかね、散歩へ出発だ。
 といってもこの週末は無理せず近場でのんびりしようということで、向かった先は東寺。弘法市は覗いても、まだ正式に拝観したことがなかったこの寺の、名にし負う立体曼陀羅を初めて目にした。


 陽が高くなるに従って地面からの照り返しがきつくなり、砂利道が眼に眩しい。輻射熱と陽射しのせいで体感温度も上がる中、堂内へと一歩足を踏み入れた途端、ひんやりとした空気が清浄な仏世界へと誘った――。
 錚々たる仏像の数々が静かに鎮座している。美仏として知られる帝釈天梵天もいる。菩薩部は静寂の中に、明王部は火炎渦巻く中に、密教世界を顕現してみせる。
 こういう空間は、“見て通る”のではなく、坐して暫しその中に身を浸すのが良い……。


 夜叉神堂や御影堂にも立ち寄り、抹茶ソフトで一休み。現在は春の特別公開も終わり、五重塔初層や宝物館、観智院は見られない。秋の再訪を誓って寺を後にした。




 帰宅の後、まだ夕刻というには早い時間につき、ベランダのウッドデッキに設えたコーナーでまったり。心地よい風に吹かれながら、西は双ヶ丘・嵐山方面〜天王山、東は新緑萌える東山をバックに西日に照り映える清水の塔や高台寺裏の観音様などを双眼鏡で眺めつつ、ビールを傾ける。
 帰路、太子道のパティスリーで誕生月にケーキセットをサービスしてくれる(一人分だけど。)というので、202系統から203系統への乗り換えがてらお茶をし、買って帰ったケーキで夕食後に改めて『おめでとう』タイム。
 まずまず良い誕生日であったようで。ご同慶の至り。。


天神市にてころ茶碗を買う



 昨日午前中、近畿地方を襲った驟雨は幸い大きな爪痕を残すことなく過ぎ、今日25日は穏やかな晴れになった。湿度も下がり、肌に当たる風が心地よい。散策にはうってつけの日和、天神市もまずまずの人出のようである。来月は夏越天神で、またひと際賑わうことだろう。


 今日のノルマは食パンとコーヒー豆を買うこと。パンは14時の焼き上がりを待たねばならないことが多く、豆は早い時間に出掛けないと売り切れてしまう。どうしようかと悩んだ末、取り敢えずパン屋に電話で確かめてみると、な〜んだ、まだあった。。早速予約確保して先にピックアップした後、いつものように天満宮の北門辺りに駐輪し、この時間にまだ豆が残っているか甚だ疑問に思いつつオオヤコーヒさんのブースへと向かう。ブースは植木市の一番奥に設置されているので、天神さんの一番南の端、表参道入り口の鳥居近くまで戻ってから植木エリアに入り込まなければならないのがちょっと厄介。覗いてみると、良かった、こちらもありました。中深炒りはもうこれが最後の一袋かな、深炒りはまだ数袋残っていた。


 必要なものを購入してしまうと気が楽になり、ぶらぶらと市を眺めて回った。今日は割合出物が多かったようだ。雲鶴の良い小皿があったのだが、手持ちのものと用途が被るのでグッと我慢。。変わり菱型と言ったらいいかな、小振りで向鉢に良さそうな深鉢の5個揃えが半額の1万円というので気を惹かれたが、やや甘かったのと、収納に場所を取られること、何より茶懐石風にお敷にお向をセットしてお客様をもてなす機会ももはやなかろうとの判断で、こちらもスルー。唯一、ふっ切れなかったのが「ころ茶碗」だった。


 パン屋に向かう途上、自転車を押しながら目を止め、コーヒーを買いに戻る道すがらまた眺め、ひと渡り市を見終わって帰る途中でもう一度手に取り……都合3度見入った。染め付けで、兎と亀があしらわれ、猪口よりは大きく、普通の汲み出し茶碗よりは小さい。手に馴染む大きさで、寛いだシーンでゆったりと酒を嗜むのに良さそうだ。「ころ茶碗」という名も愛らしい。結局表示価格から3割程引いてもらい、連れて帰ることにした。


 骨董も器も、「もういいや」とほぼ満足したはずだったけれど、足を運べばまた出会いがある。それで良いのだろう。まだまだ知らないことがたくさんあり、新たな発見がある。その奥深さがあればこそ、いつまでも飽きることなく骨董市巡りを愉しめるのだから……。

久方ぶりのお客様


 昨日はルーター騒動の後、痛む頭を抱えつつ(折悪しく頭痛が始まってしまった……)、夕刻からデパ地下へ買い出しに行った。今日お迎えするお客様のおもてなしの準備だ。
 メニューが決まれば買い物などさっさと片付くのだが、今回は全くイメージが湧かない。湧かないながらにもデパ地下を歩けば高級食材が並んでいて、取り敢えず思いつくままに買い物かごに放り込んでいく。はまちの柵、鰆の切り身、ホタテ、スモークサーモン、サーロインステーキ、とようけやの豆腐、チーズ蒲鉾、野菜各種、チーズ各種、果物は初物のビワとアメリカンチェリー、それにコーヒーのお供にとチーズケーキのホールをひとつ。持ち上げるのも一苦労、というほど買い込んだ。


 夜、買ってきた材料を思い浮かべながらメニュー作り。
1) 前菜はアスパラのベーコン巻きとスモークサーモンの大根巻き、それにチーズ蒲鉾の3種盛り。
2) サラダプレートはポテトサラダの周囲にオカヒジキで彩りを添え、外周にはスライストマトとクリームチーズを交互にあしらって軽く塩・胡椒、全体にオリーブオイル漬けのチーズ入りソースをドレッシング代わりに掛ける。
3) ブリーチーズのクラコット・クラッカー添え
4) はまちと鯛のお造り
5) 蛸ブツ
6) 鰆の幽庵焼き
7) 冷や奴
8) ほうれん草の胡麻和え
9) 鳴門金時の炊いたの
10) 玄米・胚芽米のご飯と味噌汁
11) ビワ・チェリー・キーウイの果物の盛り合わせ
12) コーヒーと甘いもの
 結局今回は、ステーキとホタテ、みりん干しは番外とすることにした。
 食器類の選定と、おしぼりの準備まで済ませて就寝。


 今朝、お天気の良いうちにと洗濯をした後、トイレと部屋の最後のチェックをし、下ごしらえに取り掛かった。
 お客様は15時に来宅。順次料理をお出ししながら和やかに歓談。お酒も進む。ビール、貴醸酒、濁り酒、ドライシェリー(アモンティリャード)、赤ワイン。
 19時頃、気心の知れた方との寛いだひとときについ飲みすぎたのか、すっかり酔いの回った連れ合いが寝入ってしまった。日頃の疲れに加えて花粉症の炎症反応でダメージがあったところに、数種のアルコールを交ぜて飲んだせいだろう。
 果物とコーヒーをお出しして、お客様を20時30分頃、無事送り出す。後片付けを終えると21時30分頃だった。
 今日のメニューでは、サラダプレートと鰆の焼物、ビワがとても美味しかったなぁ。。


 お客様を迎えるというのは、準備も片付けも大変。でも、ホスト・ゲスト共に心愉しいひとときを演出することができたとき、喜びと共に“またご招待しよう”という活力が湧いてくるものだ。
 問題は、ほとんどの食材が半分くらいずつ残っていること。これからの数日は消費期限を睨みながら、これら余り物を消化していくことになりそう。

やっぱり機械は苦手・・・


 ツイッターやり始めてからiPhoneが気になり始め、後継機が出たら本気で乗り換えようかと考え中。バッテリーの持ちが良くないという問題も聞こえてくるが、何よりSBの電波状況がどの程度のものかも気になる。そこで、旅先のホテルなどで3G波ではなくWiFiで使用できるよう、小型のアクセスポイントを購入することを思い立った(まだiPhone買ってもいないのに!)。まずは自宅で無線LAN環境を作って使ってみる。


 ビックカメラに出掛け、機種を物色。FONというのを設置すると、近い将来スタバに導入されるSBのWiFiによる公衆無線LANが使用できるというので、こちらにするか相当悩む(といっても現在使用しているノートPCは大きくて、持ち出しには向かないのだけれど……)。しかしサポートが杜撰、電波の安定性に欠ける、などの意見もあって二の足を踏んでいたところに、売り場でFONに一番詳しいという店員さんの『自分は、設定が煩雑で匙を投げた』という言葉が決定打に。結局、最も小型で携帯に適し、設定が極めて簡単という商品を買った。早速自宅に設置、無線LAN環境を作ったのが昨日のこと。無線接続でもサクサク動作して、快適だった。

 
 ところが今朝、朝食を摂りながら無線でメールチェックなどしようと触り始めたところ、さっぱり繋がらない――というより、繋げようとするのだが、恐ろしく時間が掛かって実質エラーになる、という現象。何か簡単な設定の問題だろうと、取り敢えずメーカーの相談窓口に電話して指示を仰ぐ。ルーターをリセットしてみたり電源を入れ直すなど、初歩的な作業をあれこれ試すも解決せず。商品の取り換えか修理を勧められる。
 納得がいかず、今度はPCメーカーのサポート窓口の無線部門に相談。担当技術者レベルもメーカーの窓口より数段高く、じっくり腰を据えて問題の所在を探っていく。1時間半も掛かっておよそ考え得ることをひと通り試してみたが、ルーターの中を見るのに異常に時間が掛かるなど、さらなる不具合が明らかになりこそすれ解決には至らなかった。詰まるところは初期不良だろう、と。一日掛かりで機械と取っ組み合って、結局初期不良とは……。


 修理も考えたが、購入直後の初期不良が疑われる案件にも関わらず、メーカー側に誠意が認められないので、交換品を取り寄せることにした。今度はうまく作動してくれると良いのだが。
 以前母に、『あなたは機械とは相性が必ずしも良くないのだから、新しい物を導入する際には相当気を付けないと』と言われていたことが脳裏をよぎる。また“労多くして何とやら”の轍を踏んだ形だ。こんなことではiPhoneや、そのうち欲しいと思っているデジタル一眼カメラについても、機械に振り回されることになりかねない。機械くらい道具として便利に使いこなし、時代に遅れず付いて行きたいのだけれど……。

飛行機雲と天体ショー



 夕刻、夕焼けの美しい空に長々と尾を引いた飛行機雲が多くの人の目を引いた。
 日没後、輝く金星をまるでアクセサリーの如くに従えた細い細い月が、北西の空へと沈んでいった。聞けば、次にこれほどの大接近が見られるのは24年後のことだとか。連れも呼んで、しばしこの光景に見入ったことであった。


聖林寺・安倍文殊院・高松塚&キトラ壁画見学



 今日は事前申し込みした高松塚古墳壁画修理作業室見学の日。そしてキトラ古墳の、朱雀を含む四神が揃い踏みする公開の初日である。
 キトラの方は「5時間待ちも想定」という情報に二の足を踏み、高松塚での状況次第ではパスすることも覚悟の上で、いざ出陣。


 101系統の急行バス京都駅行きは、始発が千本今出川を7時29分発。いつものようにコンビニでおにぎりを仕入れると、往路は時間が惜しいので特急を利用して大和八木まで行き、乗り換えて桜井へ。
 最初の目的地、聖林寺へのバスは本数が少ないが、鉄道と連絡しているのか駅前にちょうど停まっていて、タイムロスなく向かうことができた。



 この寺は国宝の十一面観音菩薩像で名高い。本堂に参らせていただいた後、観音堂で初の対面。参拝客はもうひと組だけで、そのお二人が去られた後は静かに観音様と向き合うことができた。やや厳めしいお顔立ちながら、指の表情はしなやかで優美。何よりその肢体のバランスが素晴らしいと言われる――。
 本堂脇の阿弥陀三尊像は、確か脇侍が聖観音菩薩と地蔵菩薩という組み合わせで、その聖観音が大層美しかった。





 ここから次なる目的地、安倍文殊院を経て桜井の駅までは徒歩だ。
 輝くような晴天の下、爽やかな5月の風を満身に受けて歩く。


 
 途中、西内酒造場に立ち寄り、例によって午前中から利き酒。。先般、室生寺の参道で購入し、大いに気に行った貴醸酒と、今回は新たに貴醸酒で仕込んだ“三塁醸酒”、さらに古代米の黒米で仕込んだという酒を購入。またしても旅の序盤から重い荷物を背負い込むことになった。


 20分少々歩いただろうか、安倍寺跡を横に見ると、間もなく安倍文殊院の参道である。



 安倍氏所縁のこの寺は東大寺の別格本山であり、日本三大文殊のひとつとしても知られる。檀家はなく、祈祷で成り立っている寺である。文殊様だけに、合格祈願や、ぼけ封じの祈祷でも有名だ。
 受付を済ませると、まず一服、茶菓をいただく。その後本堂で説明を受け、順に内陣を巡る。
 本来唐獅子の上に乗っておられる文殊師利菩薩像は、現在修復のため獅子から降り、光背も外したお姿である。獅子に乗ると全高が7メートルにも及ぶというから、お顔をじっくり拝見するには今が好機とも言える。
 想像より凛々しく、美しいお顔立ちだ。優填王、須菩提維摩居士、そして童形の善財童子を従えた渡海文殊様ご一行の様子は、一幅の絵を見るかのようだった。




(上の写真は清明堂の展望台から見た二上山。) 


 午前中の予定はこの二寺のみ。安倍文殊院から桜井の駅までは歩いて20分強の道程で、バスに乗らなかったことをやや後悔……。
 高松塚壁画の見学は13時35分からである。時刻はまだ12時前、十分余裕がある。大和八木まで戻り、近鉄で飛鳥へ。10分程歩いて飛鳥歴史公園館の見学者用の受付場所まで行き、すぐ脇のベンチのある休憩所でゆっくり昼食を取りながら暫し休憩。



 同時刻の見学者は全部で4組9名のみだった。まず10分程のレクチャーがあり、壁画の劣化がなぜ起きたのか、修復はどのように行われてきたのか、といったことについて説明を受ける。昭和と平成のカビの大発生の原因を聞いて、対策が後手後手に回ったことに愕然とさせられた。空調機を付けたは良いが、そこから発せられる熱が石室に伝わって環境を変化させたこと、防護服を着用せずに作業したことによる汚染、地震等でできた亀裂から侵入した虫が温床となったこと、崩落を止められなかった天井の土に菌が含まれていたこと……。
 そして修復作業室へと案内され、見学が始まった。


 修復作業室には解体された石室の石材が並べられている。壁画が残されているブロックは全て絵を上にして平置きされ、四神のうち失われた朱雀以外といわゆる飛鳥美人が、見学者用の窓から見て手前に来るように配置されている。部屋の中央や反対側に置かれた星宿図や男子群像などは見ることができない。手前に置かれた壁画についても、見学者用の通路はさして高い位置に設置されているわけではないので、正対するのではなく斜めから見ることになる。しかも窓から壁画までは距離があり、損傷が激しいこともあって裸眼では見え辛い部分も多いので、双眼鏡が大いに役に立った。
 見学時間は10分と短いながら、少人数で3ヶ所ある窓に分散して見られるのと、文化庁職員が2人付くので説明を聞きながら質問もでき、それなりに充足感はあったといってよい。



 作業室裏手の池は杜若が彩りを添え、静かで心地良い。
 歴史公園館の方に戻ると、ちょうど飛鳥資料館方面へのバスが到着した所。キトラの混雑状況は分からないながら、ひとまず行ってみることにしてバスに乗り込んだ。
 到着した私たちを待っていたのは……


 


 あまりの混雑予想に初日は警戒した向きも多かったのか、待ち時間なしで入れるという想定外の成り行きに。
 ロッカーもガラガラ、内部は入り口付近の展示室こそ若干込み合っていたものの、肝心の四神展示はひとつの壁画を囲む人がせいぜい4〜5人程度。キトラは高松塚より一回り小さな古墳で、壁画自体小さいうえ、四神の描かれている部分のみを剥ぎ取って修復しているので本体が薄くて小さい。それをガラスケースに入れて、上から覗き込むような形で3方から見られるように設置してあるため、じっくり観察できるのがありがたい。


 ゆっくり見学し、資料館向かいのバスターミナル横の茶屋で暫し休憩。橿原神宮前行きのバスに乗り、大和八木に戻って、帰路は始発なので急行を待ってのんびり戻った。若干バスや列車の接続が悪かったため時間が掛かったが、19時過ぎには自宅に帰着。


 今回は近鉄の「飛鳥めぐりフリーきっぷ」を購入した。京都から1,880円で、大和八木から東へは桜井、南へは壷坂山までがフリー区間になっている。大和八木→桜井、桜井→飛鳥、樫原神宮前→大和八木とフリー区間内で3度乗っているので元は取れたはず。また、特典として数か所の拝観料等が割引料金となり、安倍文殊院で1割(70円)、飛鳥資料館で100円の割引を受けている。
 700円ほどの割増でバスを含むタイプもあり、こちらにしても良かった。飛鳥エリアのバスは案外運賃が高い。桜井→聖林寺、高松塚→飛鳥資料館、飛鳥資料館→樫原神宮前と3度乗って、都合790円掛かっている。


 奈良通いももう何度目になるだろう……。この気候の良い時期を逃すまいとするかのように、よくあちこちと見て回ったものだ。まだもうちょっと、周っておきたい所がある。そろそろペースダウンして、あとはゆっくりと歩こうと思っている。